備前市議会に陳情書を送りましたが、なにも起こりませんでした。

2024年6月
「合理的配慮に基づいた教育の確保」について陳情書を備前市議会へ提出しましたが、何の反応も得ることができませんでした。

今後、陳情書を検討されている方のために私が作成した本文や、提出の流れを記載しておきます。

1.陳情書とは

 市の行政に関する要望等があるときは、どなたでも請願書、陳情書を議長に提出することができます。

備前市議会事務局  HPより

請願は議員の紹介が必要で、さらに審議が終われば結果を通知してくれます。
ただし、請願者の住所、氏名が資料だけでなくHPにさらされるという高リスクが伴うようです。

陳情は議員の紹介が不要です。備前市では陳情書・要請書・要望書・嘆願書はすべて同じものとして扱われるそうです。
念のため「住所や氏名が公開されないですよね?」と問い合わせると、陳情の場合は公開されないという返答で安心しました。

私には気軽に連絡できる知り合いの議員さんもおりませんので、陳情書を作成することにしました。

2.陳情文章の作成

もちろん陳情書を作成するのは初めてのことなので、まずは検索して閲覧できる陳情書や請願書に目を通しました。
ある程度読むと文章の傾向が見えてきます。
まずは要望の要点を簡潔に記載、そのあと補足説明として現状等を記載の形が分かりやすく読みやすいと感じたのでその様式を意識して作成しました。
また、感情的になればなるほど読み手の立場は冷めてしまうとも思ったので、なるべく事実のみを記載することを心掛けました。

3.陳情書の送付

送付方法について備前市議会事務局に問い合わせました。
「写しを議員に配布し・・」とサイトに書いてあったのでPDFの方が便利だよね、
という親切心で「メールで送りましょうか?」と伝えたのですが、紙媒体に印刷したものしか受け付けられないとの回答でした。
手渡しか郵送のみということでしたので、郵送しました。
ちなみに、氏名・住所・連絡先を記入してくださいと言われたので、
提出後、なにか連絡があるのかなと思っていましたが、一週間たっても音沙汰ありませんでした。
郵送で提出した場合はこちらから届いているか確認する必要があります。

4.陳情書の行く先

到着確認ついてに、今後の流れについて確認しました。
陳情書はこの後どう処理されるのかと聞いたところ下記のような返答が議会事務局からありました。

1 提出された陳情書の内容を議会事務局で確認します
2 議長が受理します
3 議長は全議員に写しを配付します
4 議会運営委員会で必要と認めるものは、所管の常任委員会に参考送付されます

※参考送付された委員会は、所管事務調査の範囲内において当該陳情を審査できます
(次の審査は8月下旬に開催予定の議会運営委員会となります)

ご送付いただきました「合理的配慮に基づいた教育の確保」についての陳情は
6月7日付けで受理させていただき全議員に配付しております。
今後につきましては、上記の4の取扱いとなります。

議会事務局 6/12メールより

つまり、すでに議員全員に写しを配布して、所管の常任委員会に送付されているとのこと。
上記の回答から、きっと8月の議会運営委員会とやらで議題にしてもらえるのだろうと、少し期待しておりました。

※追記
12月に改めて問い合わせたところ、4の段階には進まなかったとの回答でした。

5.陳情書、その後

しかし、その後発行された議会だよりを見ても、合理的配慮の「ご」の字もなく、もちろん何の音沙汰もありませんでした。
そして12月、陳情書を提出して半年が過ぎました。

最近知り合った隣の自治体の議員さんに聞くと「陳情書は『ふ~ん』って見るだけ」と言われました。

陳情書、意味なかったんですね。

なんとまぁ、すてきな制度です。

でもこの行動から、
・陳情書と請願書の違い
・議会事務局と、議員の働き
・陳情書作成能力
・陳情書は意味ない
と、たくさんのことが学べたのでひと段落としようかなと思います。

追記(2024.12.16)
その後どうなったのか問い合わせたところ、以下の回答があったので転記しておきます。
今後、陳情をされる方の参考になると思います。
今回は議員から特に意見や要望がなかったため終了とのこと。
備前市の議員さんは教育や福祉に関心がなかったようで大変残念でした。

また、審議してほしいなら請願(HPに本名住所公開必須)のようです。
政治に物申すにはなかなかハードルがありますね。

お問い合わせのありました陳情書のその後につきまして回答させていただきます。

本件につきましては、6/12のメールで回答した陳情書の取扱い「4 議会運営委員会で必要と認めるものは、所管の常任委員会に参考送付されます」に順じて、8/29開催の議会運営委員会の「陳情の受理状況」でお知らせしましたが、その後、議員から特にご意見や審査に関する要望等がございませんでした。
よって本件は、陳情書の取扱い「3 議長は全議員に写しを配付します」で当市議会では終了となりました。

なお、市政に関する要望等で議会としての審査や結果をご希望の場合は、「請願書の提出」という選択もございますが、櫻井様におかれましては、当初のお問い合わせで請願者の住所・氏名が市議会HPに掲載されることを避けたいとの意向に沿えない方法となっておりますので、ご理解いただきますようお願いいたします。

「合理的配慮に基づいた教育の確保」についての陳情書

最後に、私が作成した陳情書を公開いたします。
コピペしやすいように、本文にべた張りしますね。
きっと陳情書を書こう!と思う方は結構いろんな社会の制度にぶつかったり、違和感を感じたり、おかしくない?と思っている人だと思うんです。
でも、議員にコネがないと政治は動かせない。土俵にも乗らせてもらえない。
それでも、変えたい、伝えたい、困っている人をどうにかしたい。と他にもう頼ることろもない方が行き着くところだと思うんです。
陳情書を書いて伝えたいけど、書き方や制度を理解するハードルがあるのであれば、少しでも参考にしていただければと思います。(なんも変わらんかったけど(笑))

また、半年前自分が必必死で作成した文章をこのまま埋もれさせるのは、あの時の自分がかわいそうすぎるので公開することにします。
もし、他にも同じように感じている仲間がいれば、とても嬉しいです。

以下

令和6年6月4日

備前市議会議長 殿

陳情者 櫻井 彩

陳 情 書

合理的配慮に基づいた教育の確保についての陳情

備前市において、子どもたちが障害の有無に関わらず、適切な教育を受けられる環境の整備を強く希望しています。特に、特別支援学級の基準や通級指導教室及び福祉サービス事業所の設置、ICT特別支援教育の活用について以下の点についてご検討をお願い申し上げます。

1. 具体的な要望

(1)特別支援学級(情緒)への入級基準について

・ASDの診断の有無が特別支援学級(情緒)入級の基準になっていることについて、明確な理由及び根拠を開示していただきたい。

・支援学級を希望して入れなかった子どもの割合および、その対応策を開示していただきたい。

・子どもの診断名を増やす選択をせざるを得ない現状について、どのようにお考えか伺いたい。

・診断名だけでなく、現場での子どもの特性や学習・生活での困難に基づいた判断をしていただきたい。

(2)通級指導教室の設置について

・「ことば」以外の学習や生活での困難を抱える子どもたちにも対応できる通級指導教室の設置を検討していただきたい。

(3)福祉サービス事業者の設置について

・放課後等デイサービスや日中一時支援などの事業所の創業支援や誘致を検討していただきたい。

(4)教育ICTの活用

・学校の学習用端末で、特性のある子どもに合わせた学習アプリが導入できるよう検討していただきたい。

2. 要望についての説明・詳細

(1)備前市では、ASD(自閉スペクトラム症)の診断がなければ特別支援学級(情緒)に入ることができない基準となっており、同じ発達障害であってもADHD(多動・不注意症)やLD(学習、識字障害)などその他の子どもたちは普通学級での対応を余儀なくされています。このような基準により、多くの子どもたちが適切な支援を受けられず、学習や集団生活に困難を抱えています。また学校現場では教師から「支援級に入るためにASDの診断を書いてくれる病院に行ってください」と言われた保護者も少なくありません。医師に診断名を増やしてもらうよう依頼するなどの実態は、本来あるべき姿とは言えません。

(2)市内唯一、伊部小学校内にある通級指導教室は「ことばの教室」としてのみ機能しており、その他の特性を持つ子どもたちに対する支援が不足しています。

他の自治体では診断がなくても保護者や本人の希望があれば支援級に入級ができることや、通級指導教室でソーシャルトレーニングや個別の学習支援など広く対応している事例があります。同じ日本国内であるにも関わらず、生まれ育った土地によって教育への配慮や支援に格差があってはならないことです。備前市の対応には改善が必要と考えます。

令和6年4月1日から法改正をへて、合理的配慮の提供は義務化されています。時代に合わせ、法令違反とならない教育の改善を求めます。

(3)市内の福祉サービス事業所については圧倒的に数が足りていない状況にあります。近年少子化で子どもの数が減少しているのにも関わらず、発達障害など特性を持った子どもたちは増加し続けています。しかしながら、事業所の数も少なく常に定員が埋まっており、仕方なく市外や遠方の事業所を利用するものの、保護者や本人の負担が大きく、疲弊しています。本来は学習や社会性向上の支援、保護者のレスパイトケアのためのサービスですが、市内の事業所が限られているため利用を諦める家庭もあります。

本来あってはならないことですが、学童保育(放課後児童クラブ)から発達障害があることを理由に受け入れを断られた事例もあり、特性のある子どもたちは福祉サービスを利用する必要があります。

(4)備前市は県内でも先駆けて学習用端末が整備されたにも関わらず、実際は制限が多く、普段からあまり活用されていません。昔ながらの紙と鉛筆ではなく、タブレットや動画、アプリなどを使った学習で子どもたちの意欲・モチベーション・学力が向上したという事例が全国から多数出てきています。特に、発達障害や知的・肢体障害を持っている子どもたちも、ICT端末を活用し読み書きの補助をすることで学習に取り組めるなど、”障害”を越えて学ぶことができると証明されています。教育委員会での一元管理の必要性も分かりますが、合理的配慮の観点からもICTを活用した特別支援教育やリテラシーの向上のために現場の声を吸い上げ、より活用方法に向けて努力していただきたい。

以上の点について、備前市の教育環境の改善に向けて真摯にご対応いただきたくお願い申し上げます。

敬具